私の作る畳は手のひらサイズの小さな畳が多いです。
小さいからこそ、畳縁(たたみべり・布地部分)に使用する布地の柄選びは念入りに、柄の出し方は綿密に考え、計算してその小さな面積に表現させています。
そして縁の柄だしの次に大変なのは「角」。
いかに、畳の角を美しく仕上げるか。
とにかく縁巾が細いのでとても気を使います。
先日、長南畳店三代目の父から“へり引き”という畳の道具をもらいました。
手芸道具の“目打ち”に似ていますね。
この時のお話はブログに綴りましたので、良かったらお読みください☺
ミニ畳作りは試行錯誤を繰り返した完全なオリジナル
私は実家の畳屋を継がせてもらえなかったので、畳の道具は何一つ持っていません。
ですからミニ畳を作り始めてからこれまでの15年間、角を出すのには、下の写真に写っているステンレス製の薄い定規を使っていました。
この定規、私にとってはとても万能で、細かな作業には必須アイテム❢
そしてこれは建築の専門学校へ通っている時からの愛用品♡
でも・・・
この「へり引き」は・・・
何かが違う・・・
とってもいい塩梅で縁(へり)を引っ張り、折り曲げることができました❣
父が昔、このへり引きを使って角をきれいに始末している姿が印象的に記憶に残っているので、その道具を自分が使えるようになったことは、とても感慨深いものがあります。
そして父が何十年も使い続けていた道具だからでしょうか。
なんだか父と一緒に作っている気持ちになったといいますか…
実家の長南畳店は継がせてもらえなかったけれど、こういう形で跡を継ぐことができたその喜びと幸せで不思議なほど温かい気持ちになりました。
「道具にも魂が宿る」
実は初めてこの道具をもらってミニ畳を作った数日後に、その道具のうち1つは初代の曾祖父も使っていたと聞かされました。
「道具にも魂が宿る」と、聞いたことがありますが、それに似た感じなのでしょうか。
だからもしかしたら、「父と一緒に作っている気持ち」だったのではなく、曾祖父や祖父と一緒に作っている気持ちだったのかもしれません。
とても不思議な使い心地。
一人ぼっちの制作なのに、一人ぼっちじゃない時間。
これからは私が畳を美しく仕上げるために、大切に大切に使い続けようと思います・・・
・・・最後におまけ写真を1枚。
茨城県龍ヶ崎市の曾祖父から離れ、祖父が現在の新宿区北新宿の地で開業した当時の写真。
この時には既にこの「へり引き」は受け継がれていたのですね。